歯のセラミック治療の目的
セラミック治療の症例を用いて、治療方法や治療の流れ、メリット、デメリットを詳しく解説します。
審美歯科におけるセラミック治療では、e-max、ジルコニア、ポーセレンを用いたオールセラミックによる被せ物や詰め物を使った治療を指します。
良く質問される事の一つに『オールセラミックとジルコニアの違いはなんですか?』
という質問がありますが、オールセラミックという分類の中に、e-max、ジルコニア、ポーセレンは含まれます。
この3種類のオールセラミックにはそれぞれ特徴があり、セラミック治療を行う上で最も適切なオールセラミックを使用する事が大切です。
例えば詰めるタイプのセラミック治療を行う場合、特別な理由がなければe-maxを使用します。
メタルコアが装着されている歯に被せ物をする場合、第一選択はジルコニアであり、条件が整えばポーセレンでも可能です。
しかし、ジルコニアの色調が綺麗になってきている今では、ポーセレンを使ったクラウンはほとんど使用されなくなりました。
ポーセレンはジルコニアクラウンの前装部に使われ、もっぱらジルコニアクラウンの審美的要素を担う感じで使用されています。
ポーセレンをジルコニアの前装部に使っているクラウンをジルコニアセラミッククラウンと呼び、ジルコニアだけで作られているクラウンをジルコニアクラウンと呼んだりしている為、混乱する事があります。
歯のセラミック治療を受ける場合にはどちらのジルコニアのクラウンなのか注意が必要です。
目次 1-1カリエスで失われた歯牙を自然な形で回復する為 1-2保険で治療した歯を綺麗にする為 1-3後戻りの無い真っ白な歯になる為 1-4短期間で歯の色と歯並びを綺麗にする為 2-1レジンクラウン(CAD/CAM冠)は色が合わない 2-2銀歯は金属アレルギー発症の可能性がある 2-3銀歯は歯茎が黒くなる事がある 2-4セラミック治療は再治療が少ない 3-1自然で綺麗な状態が長続きする 3-2汚れが付きにくい 3-3艶を回復させる事ができる 4-1オールセラミッククラウン 4-2奥歯ジルコニアクラウン 4-3セラミックインレー(e.maxインレー) 4-4ラミネートベニア 5-1噛みしめハギシリをすると破折する可能性がある 5-2天然の歯に比べると硬い 5-3金属の歯より削る量が多い 1歯のセラミック治療の目的
1-1カリエスで失われた歯牙を自然な形で回復する為
虫歯によって歯の神経を取る事になるとほとんどの場合その歯は歯の形では無くなっています。
神経の治療をした後土台を立てて、クラウンを被せる事になります。
クラウンの種類は、硬質レジン前装冠、レジンジャケット冠、CAD/CAM冠、メタルクラウン、セラミッククラウン、メタルボンドなど多種類ありますが、最も見た目が綺麗なクラウンはセラミッククラウンです。
現在のセラミッククラウンはかなり材質が良くなってきている為、歯ぎしりや噛みしめをしていない患者さんの場合ほとんど割れる事はありません。
特に前歯を自然な感じで綺麗な歯を入れたいと願う患者さんに支持されている補綴物になります。
1-2保険で治療した歯を綺麗にする為
保険で虫歯や欠損補綴の治療をすると、奥歯は銀歯、前歯はプラスチックの白い歯を入れるのが一般的です。(最近はCAD/CAM冠を入れる場合もあります)
銀歯は最初から見た目の問題があります。
プラスチックの歯は周囲の歯の色に合わせる事は出来ませんし、経年劣化によって茶色く変色してしまいます。
そういった悩みを解決してくれるのがセラミックの歯を使った治療になります。
1-3後戻りの無い真っ白な歯になる為
歯を白くする為にホワイトニング治療(ここではオフィスホワイトニングの事を指すとします)に通われる患者様も多くなりました。
ホワイトニングは治療を受けた時は白くなるのですが、段々と後戻りを生じてしまいます。
その為、白い歯を維持する為には定期的にホワイトニング治療に通わなくてはなりません。
そして、多くの患者様が希望する『芸能人のような真っ白な陶器のような白い歯』にはなかなか到達できません。
真っ白な歯をホワイトニング治療を受け続けなくても持続する為には、
②白いセラミックの削らないラミネートベニアを貼り付ける
この2つの治療が最も効果的です。
①の治療の場合、歯を削る必要がありますが、歯並びも変える事が出来ます。
②の治療の場合、一切歯を削る事なく真っ白な歯にする事ができます。
1-4短期間で歯の色と歯並びを綺麗にする為
歯並びを綺麗に揃える治療は矯正治療が一般的でした。
歯の表面にブラケットと呼ばれる金具を付けて、その金具にワイヤーを通すことによって自由に歯を動かす治療です。
約2年間ほどブラケットやワイヤーを装着しその後も取り外しの可能なリテーナーと呼ばれる保定装置を数年装着する必要があります。
時間が掛かる事と、リテーナをきちんと使用していないと折角並べた綺麗な歯並びが後戻りしてしまう可能性があります。
セラミック矯正では、今ある天然の歯にセラミックの歯を被せて行きますので、短期間で後戻りのない綺麗に揃った歯並びを手に入れる事が可能です。
そして、歯並びを揃えると同時に希望する白い歯にする事ができます。
2保険の治療とセラミック治療の違い
2-1レジンクラウン(CAD/CAM冠)は色が合わない
そもそも保険の治療においては見た目を考慮した治療は行われません。
痛みが無く咬めれば、保険の治療としては終了となります。
装着する歯にそれ以上の快適さを求めるという事になりますとセラミックの治療という事になります。
レジンクラウンや、CAD/CAM冠の素材には透明感が無い為、天然の歯のような美しさはありません。
現在の歯科治療において使用される素材の中で最も天然歯に近い素材はオールセラミックと呼ばれる『ジルコニア』『ジルコニアセラミック』『イーマックス』の3種類です。
これらのオールセラミックを使用してそれぞれの症例に応じたセラミック治療を行う事によって、保険治療では不可能な審美性と機能性が両立された歯科治療が可能となるのです。
2-2銀歯などの金属が含まれる修復物は金属アレルギー発症の可能性がある
金属アレルギーは金属がイオン化する事によって、体内のタンパク質と結合し、体内に存在しないはずのたんぱく質を生成します。
そのタンパク質を体内から排出する為に免疫系が反応してアレルギー反応が起こります。
金属アレルギーは、水銀、コバルト、スズ、亜鉛、クロム、銅、ニッケル、パラジウム、白金、金などによって発生すると言われています。
保険治療においては上記の金属を使った修復物によって治療がなされる為に、金属アレルギーを発症する確率は高くなります。
全ての方が金属アレルギーを発症するわけではありませんのできちんとした検査も重要です。
2-3銀歯は歯茎が黒くなる事がある
歯茎が黒くなる理由の一つに銀歯によるメタルタトゥーがあります。
金属アレルギーを発症する時と同じように、金属イオンが歯茎に吸収されるとその部分が黒くなります。
メタルタトゥーは原因となっている銀歯を外して、セラミックの歯に替えただけでは十分に改善されない場合もあります。
そのような場合はセラミックの歯に替えるのと同時に歯茎除去や歯茎のピーリングを行うとメタルタトゥーを完全に除去する事ができるのでお勧めです。
2-4セラミック治療は再治療が少ない
セラミック治療が保険の治療に比べて再治療が少ない理由は①セラミックの素材自体に汚れが付着しにくい事、②セラミックの歯の適合性が高い為にセメント溶解による二次カリエスの発生が少ない事、③変色しないので見た目が変わらない事によるものです。
現在の歯科治療においてセラミックの歯は、天然の歯に最も近い特性を持った歯になります。
【以上のように歯の素材として大変優れていますが、一方で接着力が弱い事と破折しやすい事が言われています。
必要があればマウスピースも併用してセラミックの弱点を補うようにしましょう。】
3セラミック治療の優れている点
3-1自然で綺麗な状態が維持される
セラミックの歯は天然の歯と同じような光の反射をする為、艶感も含めてとても自然な感じ作る事ができます。
セラミックの素材自体も安定している為、吸水によるレジン歯のような変色やイオン流出による銀歯のようなブラックマージンを発生させません。
3-2汚れが付きにくい
艶のある素材は表面が滑沢です。
ツルツルした所には汚れは留まりにくくなります。
かと言って歯磨きをしないで良いわけではありません。
通常の歯磨きを毎日行いましょう。
3-3艶を回復させる事が出来る
数年間セラミックの歯を使用していると、何となく表面の艶が無くなってきている事に気が付く事があります。
食器もそうですが同じ時期に買って毎日使用した食器と使わないで保管していた食器を見比べてみると艶感が違うと思います。
セラミックは毎日使っていると細かい傷が付く場合があります。
傷が付くと光の反射が弱くなる為、それで艶感が無くなったように見えるのです。
通常のお食事によって付いた細かな傷でしたら、専用のセラミック研磨によって回復させる事ができます。
4目的別歯のセラミック治療の種類
4-1オールセラミッククラウン
オールセラミックの素材で作られたクラウンの事を指します。
現在の歯科治療で一般的なオールセラミック素材はジルコニア、イーマックス、ポーセレンの3種類になります。ジルコニアとイーマックスについての違いはコチラ。
ジルコニアには2種類あって、ジルコニアだけで製作したクラウンとジルコニアをフレーム部分に使い表面にポーセレンやイーマックスなどを盛り付けた二層タイプのクラウンがあります。
前者をオールジルコニアクラウン、すごく硬いジルコニアのクラウン。
後者をジルコニアセラミック、ジルコニアのレイヤリングクラウンなどと呼んでいます。
4-2奥歯ジルコニアクラウン
ジルコニアクラウンに敢えて奥歯と付けて呼んでいる場合、オールジルコニアクラウンを指している事が多いです。
オールジルコニアとジルコニアセラミックの大きな違いは色のバリエーションとクラウンの硬さによります。
ジルコニアセラミッククラウンはオールジルコニアクラウンに比べて破折しやすい為、噛みしめや歯ぎしりをしてしまう場合にはオールジルコニアクラウンを被せた方が良いかもしれません。
しかしオールジルコニアクラウンは色を自由に出す事が出来ない為、周囲の歯に色を合わせる事が出来ない可能性があります。
4-3オールセラミックインレー(e.maxインレー)
セラミックで詰め物を作る場合、一般的にはe.maxを使って製作します。
ジルコニアで作る事もありますが特別な理由がなければe.maxで作っておいた方が良いです。
理由としては、ジルコニアで詰め物を作ると色が全く合いませんし、適合も悪くなるからです。
特別な理由としは、接着性のブリッジを作る場合はジルコニアでインレーを作る事になります。
e.maxで連結した歯を作ると破折する確率が高くなるからです。
4-4ラミネートベニア
最近はラミネートベニアと言っても、歯の表面を削るタイプのラミネートベニアと歯の表面を削らないラミネートベニアの2種類があります。
いずれもジルコニア、e.max、ハイブリッドセラミックのどれかの素材で製作されていますが、削らないラミネートベニアを製作する場合はジルコニアは使わない方が良いです。
削らないラミネートベニアはその厚さを0.5mm位にして製作する必要があります。
3種類の素材はどれも0.5mm位の厚さのラミネートベニアを作る事ができますが、適合性においてジルコニアは他の2種類の素材に劣ります。
ラミネートベニアの治療において、張り付けたラミネートの厚さとセメント層のトータルの厚さはとても重要です。
厚いと唇に違和感が強く出るからです。
同じ0.5mmの厚さのラミネートベニアであったとしても、歯の表面に貼り付けると、適合性の悪いジルコニアのラミネートはセメント層が厚くなる為、ラミネートベニア+セメント層が厚くなり違和感を強く感じるようになります。
5歯のセラミック治療のデメリット
5-1かみしめ、歯ぎしりをすると破折する可能性がある
セラミックの歯はとても硬く天然の歯に比べると、e.maxは4倍位、ジルコニアは10倍位の硬さがあります。
それでも破折する事はあります。
セラミックの歯でクラウンを被せた場合、接着部分は、天然の歯+セメント層+セラミックの歯と3層構造になるわけですが、何かの理由でセメント層の部分が崩壊してしまうと、セラミックの歯が取れたり、破折したりします。
5-2天然の歯に比べると硬い
天然の歯は長年使用していると段々咬耗してきます。
セラミックの歯も咬耗しますが、天然の歯に比べると咬耗するスピードが遅いです。
その為、同じように使っていると天然の歯に比べて高さが高くなってしまう事もあるのです。
噛み癖などにも影響されますが、周囲の歯の高さに比べて著しく高さのバランスが崩れると早期接触の状態になり、痛みが出るようになります。
5-3金属の歯より削る量が多い
セラミックの歯はチッピングが起こりやすいです。
その為、天然の歯との移行部分は適切な厚さを確保しておく必要があります。
金属の歯は展延性があるので、すごく薄くしたとしても臨床上ではあまり問題になりません。
神経の無い歯にセラミックの歯を被せる場合、セラミックの歯を維持する為の厚みは問題なく確保できますが、神経が残っている歯にセラミックの歯を被せる場合、十分な厚みを確保すると知覚過敏になってしまう事もあります。